コーチングにおいては、クライアントの成長のために、コーチ自身もまた、成長し続ける必要があります。
コーチはいったいどのようなトレーニングをしているのでしょうか?
まずはコーチングに必要な要素を理解した上で、コーチの自己研鑽について考察してみましょう。
コーチングとは何か?
コーチングの基本理念
コーチングの基本理念は、個々の可能性を最大限に引き出すことにあります。クライアント自身が解決策や目標を見つける手助けをすることが重視され、そのプロセスでは、クライアントの自己認識を深め、自主性を促進するために、質問技術や傾聴が用いられます。
また、コーチはクライアントの挑戦を支え、彼らの成長を促す役割を担います。コーチング成功への道は、クライアントが自身の内面と向き合うことから始まります。
コーチングの根本要素
双方向のコミュニケーション
双方向のコミュニケーションは、コーチングにおいて極めて重要です。
一方的なヒアリングや、一方的な指導ではないのです。コーチとクライアントはお互いの意見や感情を自由に交換し、より深い理解を促進します。
特に、質問を活用することで、クライアント自身が答えを見つける手助けをすることができます。また、アクティブリスニングを用いることで、話されている内容を正確に理解し、適切なフィードバックを提供することが可能になります。これにより、コーチングセッションはより効果的で、クライアントの自己実現に寄与するものとなります。
このようなコミュニケーションスキルは、コーチングの質を向上させ、クライアントの成長と成功を支援するために不可欠です。
継続的な関係構築
継続的な関係構築もまた、コーチングにおいて非常に重要です。
単発のセッションで終わることなく、コーチングの関係は、継続することにより、セッションとセッションの間にも生まれてくるものです。クライアントとの信頼関係を築くことで、彼らの自己開発を効果的にサポートすることができます。
このプロセスでは、相互理解が生まれ、またクライアントの目標に対する継続的な関心を持ち続けることが、彼らのモチベーションを高める要因ともなります。それにより、クライアントは自らの目標達成に向けて積極的に取り組むことができるようになります。
コーチとしては、クライアントの成長を見守りつつ、必要に応じて適切なアドバイスを提供することが求められます。
個別対応の重要性
個別対応の重要性は、特にコーチングのトレーニングにおいて無視できません。目の前のクライアントは常に異なる人物であり、同じ人物であっても、同じ瞬間はありません。
コーチングにおいての対応は全てが個別対応なのです。
各個人のニーズや、その時の感情を瞬時にキャッチし、それに合わせた効果的な対話を紡ぎ出します。
例えば、クライアントの過去の経験や現在のスキルレベルを考慮に入れたプログラム設計は、モチベーションの向上に直結しますし、個々の弱点を克服するためのステップも、クライアントが自信を持って前進するための糧となります。
このような個別対応は、コーチと学習者の間に信頼関係を築く上でも極めて重要です。それぞれの人に合わせたアプローチにより、コーチングの効果は大きく向上します。
コーチングに必要な基本スキル
傾聴する力
傾聴する力は非常に重要な要素です。ただ、私はこの「傾聴」ということばを「アクティブリスニング」という言葉で置き換えて使うことが多いです。(自分の中では明確に区別をしています。)
ここでは、分かり安いように「傾聴=アクティブリスニング」だと思ってください。
相手の話をただ聞くだけでなく、その感情や意図を理解し、適切なフィードバックを提供することが求められます。これにより、相手は自己理解を深め、解決策を自ら見つけ出す手助けを受けることができます。
傾聴は、言葉の背後にある真意を捉え、相手の成長を支援するための鍵となるスキルです。
承認の技術
コンサルティングではあまり意識されない気がしますが、コーチングにおいてはとても重要なスキルです。
承認することで、相手の自己肯定感を高め、ポジティブな行動変容を促すことができます。コーチングはあくまでもクライアント本人が自発的に行動することを重要視しているため、相手の努力や成果を認め、適切なフィードバックを提供することが求められます。
このプロセスには、相手の感情や立場を尊重する姿勢が不可欠です。また、個別対応の延長として、承認の言葉を選ぶ際には、その人の個性や状況に合わせたカスタマイズが効果的です。
誠実で思いやりのあるコミュニケーションを通じて、信頼関係を築き、コーチングの成果を最大限に引き出すことができるでしょう。
効果的な質問をする技術
効果的な質問をする技術は、コーチングのトレーニングにおいて重要な役割を果たします。
質問は対話を深め、クライアント自身が答えを見つける手助けをするため、質問の仕方を学ぶことは非常に価値があります。
具体的には、オープンエンドな質問を用いることで、より豊かな情報を引き出すことが可能です。(俗に言う「オープンクエスチョン」です。)これにより、クライアントは自己理解を深め、具体的な行動計画を立てやすくなります。
また、質問には相手の立場を尊重し、安心感を持って話せる環境作りが必要です。クライアントが自らの考えを深く掘り下げ、解決策を自分で見つけることができるよう支援することが、コーチとしての使命です。
スキルアップのためのコーチングトレーニング方法
ロールプレイングを通じた実践
個人的には、セッションのスキルを向上させる唯一最大の方法は、「場数を踏む」ということです。そのために、ロールプレイングはコーチングのトレーニングにおいて非常に効果的です。
実際の対話を想定して対話することで、コーチは自身のスキルを磨くことができます。特に、クライアントとのコミュニケーションや感情の変化を捉える技術の向上に役立ちます。
また、ロールプレイングを通じて、コーチは自身の対応の仕方を客観的に見直す機会を持つことができるのです。自分のセッションを客観的に見る為にも、録画をして見返してみるのはとても効果的です。
ロールプレイングだからこそ、様々なケースを経験することができ、チャレンジも可能です。是非積極的に取り組んでみて下さい。
コーチングセッションで役立つ質問例
実際のセッションでも活用することができる、質問の例を少しだけ記載しておきます。
何かの参考になれば幸いです。
アイスブレイクに有効な質問
アイスブレイクに有効な質問は、相手の興味や経験に焦点を当てることが重要です。
例えば、「最近読んだ本でおすすめはありますか?」や「趣味は何ですか?」といった質問は、相手の個性や好みを知る良いきっかけになります。
信頼関係の構築や、クライアントへの共感力を高めるのに活用できると思います。
目標設定時の質問
目標設定は、コーチングセッションにおいて重要なステップです。適切な質問を行うことで、クライアント自身が自己理解を深め、具体的な目標を設定する手助けをします。
例えば、「どのような成果を得たいですか?」や「その目標を達成するためには何が必要だと思いますか?」といった質問が効果的です。
これにより、クライアントは自分の望む未来を明確に描き、それに向かって具体的な行動計画を立てることができます。また、目標設定のプロセス自体が自己モチベーションを高める効果もあります。
視野を広げる質問
クライアントが見ている範囲を広げてあげるのも、コーチの大切な役割です。
例えば、「どのような状況で最も活力を感じますか?」と問うことで、クライアント自身が気づいていない情熱を引き出すことができます。
また、「失敗を経験したとき、どのように感じましたか?」と尋ねることで、挑戦の重要性や学びの価値を再認識させることが可能です。
これらの質問は、自己理解を深め、新たな可能性に目を向けるきっかけを提供します。コーチとしての役割は、クライアントが自身の内面と向き合い、成長する手助けをすることにあります。
焦点を絞る質問
逆に、広がり過ぎた思考を、整理して焦点を絞ることも、求められます。
効果的な質問はクライアントの思考を深め、自己理解を促進し、具体的な行動へと導くことができます。
例えば、「どのような結果を望んでいますか?」という質問は、クライアントに目標を明確にさせ、それを達成するための動機付けを提供します。また、「その目標に向かう際の障害は何ですか?」と問うことで、解決すべき具体的な課題が明らかになります。
このように、質問一つ一つがクライアントの内省を促し、自己実現の道を切り開く手助けとなるのです。
深掘りする質問
コーチングでは、深掘りする質問が多用される傾向にあります。とても重要ですが、こればかりに頼るのは危険です。際限なく深掘りすることは、対話が迷子になってしまいがち。特に最初はそんな傾向が出やすいので、注意してみてください。
深掘りが重要な理由は、クライアント自身が持つ問題や課題に対する洞察が深まるからです。
例えば、「どうしてその目標を選んだのですか?」と尋ねることで、クライアントの内面的動機が明らかになります。この過程で、クライアントは自己理解を深め、より効果的な行動計画を立てることが可能になります。したがって、コーチは質問を通じてクライアントの自己発見を助け、その成長を促す役割を担います。
このような質問技術は、コーチングのセッションをより価値あるものにし、クライアントの目標達成に寄与します。
イメージさせる質問
コーチングでは、「あなたの目標は何ですか?」といった質問がよく使われます。
この種の問いかけは、決して表面的な回答を得るのではなく、そこから様々な質問で、広げ、深め、焦点を絞り、明確にしていく必要があります。
しかし、この「イメージさせる」質問を通じて、クライアントに自己のイメージを形成させる最初のプロセスは非常に重要です。
クライアントが理想的な未来を明確に描くことで、現実の行動変容へと繋がります。
現状把握に有効な質問
コーチングでは、現状も重要です。
今、自分達がどういう状況にいるのかを正確に把握しなければ、そこから目的に進むこともままならないのです。効果的な質問は、クライアント自身が自己理解を深め、目標達成のための具体的な行動計画を立てる手助けをします。
例えば、「現在の課題は何ですか?」や「これまで試した解決策で効果があったものは何ですか?」といった質問は、クライアントの現状を明確にするのに役立ちます。
また、「どのような結果を望んでいますか?」と尋ねることで、その人の目標や願望を具体的に理解することができます。これは、目的地を明確にするのに役立ちます。
現状の把握と、理想の把握、これらは対となって、コーチングの軸となってきます。
行動設定のための質問
コーチングでは、考えるだけではなく、実際の行動変容が求められます。
まず、「何を成し遂げたいですか?」と問うことからから始めましょう。次に、「その目標達成に向けて、何が必要か?」と考え、必要なリソースやスキルを洗い出します。また、「どのような障害が考えられるか?」を予測し、それに対する対策も計画に含めることが大切です。
これらの質問に答えることで、具体的かつ実行可能な行動計画を立てることができ、目標達成への道筋が明確になります。
まとめ
コーチングには、さまざまな知識やスキルが存在し、コーチは常にそれらを磨き続ける必要があります。知識だけではなく、実際のセッショントレーニングを通して、自分の弱さや特徴と向き合い、研鑽していくのです。
2つとして同じセッションが無いように、セッションのトレーニングに終わりは無いのです。
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